令和8年度東京大学大学院入学式 祝辞(国际连合事务次长?军缩担当上级代表 中満 泉 様)
令和8年度東京大学大学院入学式 祝辞
新入生の皆様、东京大学大学院入学おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
私がアメリカのジョージタウン大学院に入学したのは40年近く昔の1987年です。その年の12月には当时のアメリカ?レーガン大统领とソ连のゴルバチョフ书记长が中距离核戦力全廃条约(滨狈贵)に署名し、冷戦が终结に向かいつつあることを肌で感じ、まさに歴史の転换期にあることに若い学生として兴奋を覚えたことを记忆しています。世界中から集まった様々なバックグラウンドを持つクラスメート达と、新たな国际関係とこれからの歴史がいかに进展するのかといった议论の轮に、当时はまだあまり流畅でなかった英语で参加して大いに刺激を受けたものです。そして私が国连に奉职した1989年の终わりに冷戦が正式に终结し、ポスト冷戦期が始まりました。
皆さんが大学院での研究生活に入る今、私たちは再び歴史の大きな転换期にあります。冷戦が终结した时以上の、地球人类にとっての重要な分岐点とも言えるかもしれません。
ヨーロッパや中东での戦争のニュースからも明白な、军事大国の地政学的な竞争?紧张関係が再来しただけではありません。世界は多极化し、より复雑になり、大きなパワー?シフトの只中にあります。同时に世界中のデータを保有しデジタル?インフラを支配し、実质的に社会インフラも运用するような、国家権力を超える大きなパワーを持つ民间公司が存在するようになりました。そして国际社会が长い时间をかけて、大きな悲惨な戦争の教训をもとに作り上げてきた国际法に基づく国际秩序そのものが弱体化し、いくつかの大国の攻撃もあって根本的に揺らぎ始めています。これらの复雑で困难な环境の中で、とてつもないスピードで科学技术の进展が进み、私たちの社会の全ての侧面が根本的に変わろうとしています。日常生活から教育、医疗、経済や雇用?労働、そして戦争の戦い方まで。
私たちが存在する现在の世界の「デュアリティー」、二元性に、注意を払わなければなりません。一つの事象について、相反する异なる侧面が存在しているということです。この相反する侧面の両方を理解することは、未来に向けた分岐点にある私たち人类が、正しい选択をするために必要なことです。いくつか简単な例を挙げてみましょう。
例えば、全世界の资产は21世纪を通じて増加を続けています。世界全体で见れば、私たちはより豊かになっているわけです。特に、世界のビリオネアの富は2020年以降で81%も増加しました。しかし富裕层上位10%が世界の富の75%を保有し、同时に世界にはいまだに7亿人ほどの人々が1日を2.15ドルで暮らす极度の贫困状态にあるのです。このような格差?不平等の拡大は、例えば経済学者トマ?ピケティによれば、资本収益率が経済成长率を上まわり続けるために资产を持つものがさらに豊かになる、という経済システムの构造的な要因があるためです。
食粮生产でも似たような状况にあります。世界の穀物生产量は28亿トン以上、世界のすべての人々が十分に食べられるだけの食料が生产されています。それにもかかわらず、世界人口の12人に一人が飢饿に直面しています。生产された食料の3分の1が破弃されているというフードロス问题もありますが、2022年のロシアのウクライナ侵攻をきっかけに各国で食料価格が高腾し、インフレーションが进んでいることも、世界中で低所得の人々の十分な食料确保を难しくしています。
私たちの未来をとてつもなく豊かにより良いものにしてくれるであろう、惊异的な进展を続ける科学技术にも、大きなプラスの侧面と、恐ろしいマイナスの可能性があります。础滨やバイオテクノロジーの进歩は、难病の治疗を可能にするでしょうし、农业生产、エネルギー产业、地球环境问题や気候変动など多くの地球规模课题の解决に贡献することは间违いありません。同时に、多くの専门家が础滨のいわゆる「破灭的リスク」を回避するためのガードレールが必要であると主张しています。そして、その紧急性はますます高まっています。事実、础滨公司のアンソロピックや翱辫别苍础滨は、先月生物化学兵器分野の専门家の募集を始めました。すでに数年前から、础滨がわずか数时间で数万もの、化学兵器に転用可能な毒性の强い化合物のデザインを作成可能であることが判明しており、破灭的な悪用を防ぐために公司自身による自社技术の安全性を高める努力が必要になっているのです。化学兵器や生物兵器に関しては禁止条约がありますが、础滨などの技术の影响を防ぐには完全とは言えず、军事?安全保障分野全般での础滨开発?利用に関する国际的な规范やガバナンスの必要性は、国连でも议论は始まっているもののいまだ整备はされていません。
私たちの立っている分岐点とは、格差と不平等が固定化し拡大していく社会経済のあり方を见直し、谁一人取り残すことなく皆が豊かさの恩恵を受けることができ、结果的に安定した繁栄する世界を构筑していく道を选ぶのか、それとも极端な社会の歪みを正すことなしに、多くの人々を困难な状况に置き去りにして、どこかで大きな破绽をもたらすリスクを持つ道を选ぶのかという分岐点です。そしてシンギュラリティー(技术的特异点)が本当に起こるのか、いつやって来るのか専门外の私にはわかりませんが、私たち人间が础滨に使われ支配される未来ではなく、础滨のもたらす恩恵を最大限にし、人间がこれを使う未来にするための基盘を作れるのか、という分岐点でもあります。人间のみが持ちうる创造性や、私たちが时间をかけて発展させてきた伦理的な価値観や规范をもとに、いわば新たな文明を作るための分岐点もしくは出発点とも言えるのかもしれません。
皆さんは、このような重要な歴史の転換期に東京大学大学院での研究生活を始めるわけです。今年1月に亡くなったハーバード大学名誉教授で日本人初のアメリカ歴史学会会長でもあられた入江昭先生は、歴史学を現代と過去との対話であり、未来を設計するための活動でもあるとし、国境を越えた「知の共同体Community of Knowledge」の重要性を強調しました。歴史学に関わらず、玉石混交の膨大な情報が溢れる時代だからこそ、誠実で学究的な専門的研究こそが、未来に役立つ知識と知恵を生み出すのだと思います。皆さんは、そういった「知の共同体」のメンバーとなるわけです。できれば、自らの専門領域を超えて、学際的な知の好奇心を持って欲しい。異なる分野の専門家ともネットワークを築き、協働して欲しい。先に述べたテクノロジーのガバナンスの議論において、様々な科学技術分野と社会学、倫理学、国際法、哲学などいくつもの分野の知見の融合が欠かせないと私自身、実務で実感しているからです。
Dear fellow students,
You will no doubt be among those in the world who help lead and cocreate a better future for all of us.
As you begin to step into that leadership role,?with joy, excitement, privilege, but also profound responsibility,?allow me to offer a few reflections.
First, be brave.
Do not hesitate to take risks, or even to fail. Failure is not a verdict; it is part of the process through which real learning and growth occur, be it personal, academic, or professional. Courage also matters when the moment comes when you must stand up for your principles. There will be times when you feel compelled to voice concern, take a position, or act on issues that are fundamental to your values. For me, peace and respect for human dignity have always been such issues. If those who are educated and privileged like yourselves choose the path of “If you can’t beat them, join them,” we fail the world. Sharpen your moral compass. Let it guide you toward principled courage.
Second, be confident but never arrogant.
Believe in your abilities, yet remain open to others, especially those who see the world differently. Listen to them. Innovation and breakthroughs often emerge from curiosity and from listening to diverse perspectives. Humility is not a weakness; it is a strength that earns trust and respect. Rabindranath Tagore, the first Asian Nobel laureate in Literature, famously wrote: “We come nearest to the great when we are great in humility.” How true this is in today's world full of gigantic egos!
Third, be selfreflective and tolerant, and be sincere in your regard for others.
Cultivate empathy for those who are less fortunate or who live in vulnerable circumstances. Much of modern history has been shaped by people who worked to correct injustice and to build a more humane world. I hope your pursuit of knowledge will contribute to this long tradition of striving to make our world fairer, safer, and more dignified for all.
今日ここに集う女子学生の皆さんに、特别なエールを送ります。皆さんは、间违いなく竞争を胜ち抜き、明确な目的を持って大学院での生活を始めることでしょう。どうか、初志を贯彻してください。谁に媚びることも忖度することも远虑することもなく、かといって无理に肩肘张ることもなく。私たち女性同士で助け合い、心ある男性たちとも同盟を组みましょう。そして、何よりも充実した日々を楽しみ幸せであってください。自分がパッションを持って目的を追求するときの苦労は、苦しいものではなく人生の充足感になることを私は知っています。心から応援しています。
皆さま、ご入学重ねておめでとうございます。どうかここでの経験が、あなた自身の人生を豊かにするだけでなく、周りの人々?脆弱な立场の人々を助け、あなたの属する社会や国、そして世界にも贡献しますように。そして私たち皆の未来を安全で豊かなものにする、歴史を创る作业に参加する旅路が、あなた自身の幸せと大きな达成感をもたらしますように。
Bonne chance, Bon courage and Bon voyage.
令和8年4月13日
国际连合事务次长?军缩担当上级代表
中満 泉
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